ニワトリの細胞は自分自身で性別を決める

tsukubascienceadmin
By 小村 達也 9月 17, 2010 09:31
(写真:Nature)

(写真:Nature)

脊椎動物においては、体細胞――精子や卵を除く体の普通の細胞――の性別は生殖腺(オスやメスの生殖器官)から分泌されるテストステロンやエストロゲンといった性ホルモンによって決定されると思われてきた。このことは鳥類を含む全ての脊椎動物に適用されると思われていたが、2010年3月11日付のNatureに発表された、両性具有、つまり性別が入り混じった鳥に関する研究により、鳥類の体細胞は性ホルモンに影響されず、それ自身で性別を決めることが分かった。

研究者たちは、雌雄モザイクのニワトリ――オスとメスの両方の特徴を持つ希少なニワトリの形態――を調査した。そのニワトリは片側がメスで、もう片側がオスの形態をしていた。メスの側は茶色で、肉垂や蹴爪は小さかった。これはメスのニワトリの特徴である。その一方、オスの側は白色で、肉垂や蹴爪は大きく、筋肉も発達していた。

研究者たちは、各細胞の性別を分析するため、ニワトリの両側から採取した体細胞を調べた。すると、オスの側はオスの細胞から、メスの側はメスの細胞から構成されており、また細胞には、このニワトリの奇妙な特徴の原因だと思われた染色体異常がないことが分かった。これにより、雌雄モザイクのニワトリは、自身の性別を独立して決定するオスとメスの両方の細胞が混在していることが示された。

ところで、ヒトを含む他の脊椎動物では、どのようにして性別が決定されているのだろうか。他の脊椎動物の初期胚は、性別を決定する遺伝子がオスかメスのどちらかの生殖腺の発達を促進するまでは、オスもしくはメスに特殊化していない。その後、生殖腺は全ての細胞をオスかメスへと誘導する性ホルモンを生成する。そのため、もしもオスの胚の生殖腺になる部分をメスの同じ場所に移植すると、メスのホルモンの影響を受けるため、オスの細胞はメスの細胞となる。しかしながら、このことはニワトリには当てはまらない。移植された部分は本来の性別として成長し続ける。

これらの実験結果により、ニワトリの体細胞は性別のアイデンティティーを自分自身で決定し、性ホルモンには依存しないことが分かった。この稀な性質が奇妙な雌雄モザイクの鳥を誕生させることになるのだ。

筑波大学の丹羽隆介助教は、「発生生物学者は一般には、全ての脊椎動物が同じ性決定メカニズムを共有していると信じてきた。この研究は脊椎動物の性決定原理の共通知識を明確にし、鳥類は哺乳類とは異なった発生パターンに従うということを強く示している」と言う。

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By 小村 達也 9月 17, 2010 09:31
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